企業会計原則という言葉を聞いたことはあるでしょうか?以下の7つの一般原則があります。
・真実性の原則
・正規の簿記の原則
・資本取引・損益取引区分の原則
・明瞭性の原則
・継続性の原則
・保守主義の原則
・単一性の原則
それぞれの原則名を見れば大体想像がつくと思います。そして、粉飾行為はこれらの原則に反しています。
金融機関から資金調達をしたい、取引先に良い財務内容を見せたい、などの理由で、粉飾決算をしてしまう事業者がいます。
しかし、粉飾決算にはメリットを遥かに凌ぐデメリットがあります。ここでは、粉飾決算と粉飾決算に使いがちな項目を説明します。
粉飾決算とは
粉飾とは不正な会計処理を行うことで、粉飾決算とは粉飾により真正な内容ではない決算書(決算内容)のことをいいます。粉飾については、たまにニュースで聴くこともあるでしょう。粉飾の多くは、自社の財務内容を、実際の内容より良く見せるために行われます。
では何故、粉飾を行うのでしょうか?
それは、金融機関から融資を受けたい、取引先に良い財務内容を見せたい、取引先と良好な取引関係を続けたい、取引先からの信用を維持したい、支払う税金を少なくしたい、業績連動型の役員報酬を多く得たい、などがあります。
粉飾は、基本的に決算書の閲覧者から見てバレにくい科目を使用します。
ちなみに、金融機関用の決算書、取引先用の決算書、自社の真正な決算書…のように複数の決算書を準備する事業者もいます。
粉飾のデメリット
粉飾決算の結果、金融機関から融資を受けると、詐欺罪に問われることがあります。これは、本来の財務内容なら融資が下りないと思われる場合、粉飾をすることにより良い財務内容に見せかけ、金融機関を騙す行為に当たるからです。
また、大きな信用問題にもなります。粉飾行為が明るみに出ると、決算内容だけでなく会社全体の信用を失います。その結果、取引先が離れていったり、非常に収益性の悪い取引しか出来なくなる可能性もあります。
そして、一度粉飾をすると、さらに粉飾を続けなければならなくなります。たった1回の小さな粉飾が大きな粉飾に繋がりかねません。嘘を嘘で塗り固めるようなものですので、粉飾行為は絶対に避けましょう。
粉飾に使われる科目
決算書には多くの科目がありますが、特に粉飾に使われがちな科目を紹介します。
粉飾決算を見抜くポイントでもありますので、是非ご覧ください。
現金
資産を増やす粉飾で一番使いやすいものは、現金です。現金には名前も書いていませんし、事務所に保管している現金を確認しにくる金融機関や取引先は滅多にいないでしょう。
多額の現金が計上されている決算書は、現金商売をする業種以外は怪しいと考えます。業種からみて、多額の現金を保管している決算書を見かけたら、何故それほどの現金を銀行預金にせずに保管しているのかを聞いてみましょう。
余談ですが、多額の現金を保管している中国人オーナーの不動産業者がいます。理由を尋ねたところ、「金融機関が休みの土日に、良い不動産の売り情報があれば現金で手付金を払うんですよ」「現金を見せたり、すぐに手付金を支払ったほうが、こっちの誠意が伝わりやすいんです」との回答でした。そもそも現金取引はマネーロンダリングの問題になりやすいのですが、売主・買主ともに外国籍の方ですと、そこまで考えていらっしゃらないのかもしれません。
話が脱線しますが、不動産などの高額商品を売買するときに、マネーロンダリングで余計な詮索を受けたくなければ、銀行振込での取引にしましょう。
売上(売掛金)・仕入(買掛金)
売掛金とは売上代金の未収金、買掛金とは仕入代金の未払金と考えてもらって大丈夫です。
売上(売掛金)・仕入(買掛金)ともに相手先がある取引ですが、架空取引を計上されると一見するだけでは分かりにくいです。
例えば、架空取引で売上を計上したとします。仕分けの相手方は売掛金になることが一般的ですが、第三者からみると、その取引が架空取引かどうかが判断できません。
逆に、仕入をしているのに計上しない粉飾もあります。
売上を過大に計上したり、仕入を過少に計上すると利益が多くなりますので、決算書上の見た目は良くなるでしょう。
しかし、キャッシュフロー上では大きな問題が発生します。
売掛金が架空取引で計上されたものであるため、現預金はいつまで経っても増えません。買掛金は決算書上で記載していなくても、実際には取引先に支払わなければなりませんので、決算書上の現預金と実際の現預金に差異が発生することになります。
商品・仕掛品
商品や仕掛品は製造業でよく見かける科目です。仕掛品は、作成途中の商品とのイメージで大丈夫です。
商品・仕掛品も現金と同じく、倉庫等に保管されているこれらを確認しにくる金融機関や取引先は滅多にいないでしょう。
商品・仕掛品も資産の水増しに使用されがちです。実際に、どれくらいの価値の商品がどれくらいあるか、実際は誰のものか、については決算書を見るだけでは分かりません。
また、不良在庫を適切に処理していない事業者も見られます。例えば、明らかな不具合が発生している商品や、腐った食材などは、商品破棄損などで計上しなければなりません。
これを怠ることで、実態とは異なる商品在高となり、ひいては過大な自己資本比率が算出されることもあります。
貸付金・借入金
貸付金・借入金は、相手方によっては非常に操作しやすい科目です。特に、従業員や代表者への貸付金や、代表者からの借入金はよくあります。一方、金融機関からの借入金は、通常は残高証明書で確認するため、粉飾は非常に難しいでしょう。
特に代表者貸付と代表者借入は、ほとんどの場合は契約書等を作成していないため、正しい数字かどうかを検証することが難しいです。
仕分けを行っていて、帳尻が合わなかったら「とりあえず代表者貸付・借入で帳尻を合わせておこう」と考える事業者もいるのではないでしょうか?
事業者の規模によりますが、数千万円単位の代表者貸付・借入があると、金融機関はチェックするでしょう。何のために代表者に貸付をしたのか、代表者借入の原資はどうやって蓄積されたものか、などを根掘り葉掘り聞かれることになります。
まとめ
・粉飾決算はデメリットが大きいため、やめましょう。
・粉飾に使われる科目を知っていれば、自社や他社の決算書から粉飾を見抜くことも出来るかもしれません。
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