金融機関から融資を受けたいけれど、必要な書類は多いし、そもそもどんな書類が必要なのか分からない、銀行は何をチェックしているのかが分からない…という事業者様がよくいらっしゃいます。
ここでは、金融機関は何をチェックしているのか、融資審査のポイントを説明したいと思います。
なお、金融機関ごとに融資審査の方法やチェックポイントは異なりますが、金融機関で融資業務を行っていた当職が特に注意していた点をご説明致します。
法人も個人事業主も概ね同じように審査していますが、ここでは法人を対象とします。
融資審査で主にチェックしていることは以下の通りです(これら以外にもチェックしていることは多くあります)。
①履歴事項全部証明書
②法人の財務内容
③税金滞納の有無
④融資内容・事業計画の妥当性
また、抽象的になりますが、事業者にとって『良い借金』であるかどうかも審査対象です。「良い借金と悪い借金」もご参照ください。
融資案件を審査した結果、否決となる可能性もあります。「融資審査で否決となる理由」もご参照ください。
①履歴事項全部証明書
法人の場合、履歴事項全部証明書を確認しています。履歴事項全部証明書には、商号や事業目的、役員、設立年月日などが記載されています。
商号が頻繁に変更されていないか、事業目的通りの業務を行っているか、役員が頻繁に入れ替わっていないか、などをチェックしています。
商号や役員が頻繁に変更されることは、普通では考えにくいことですので、何故なのか確認されるでしょう。
また、事業目的に一貫性がないときも、場合によっては質問を受ける可能性があります。登記をするときに色々な事業をしたいと思って、事業目的をたくさん登記することは可能ですが、あまりに事業目的が多すぎたり一貫性がなかったりすると、どの事業を行っていて、どの事業を行っていないのかを確認されることもあります。
法人や役員についても、反社会的勢力等に該当しないかもチェックされます。もしこれに該当してしまうと、たとえ財務内容が非常に良くても、融資案件内容が非常に素晴らしくても融資審査は通らないでしょう。
②法人の財務内容
融資審査をするにあたり、その法人の財務内容は重点的にチェックしています。
基本的に、法人の決算書は3期分を確認することが多いですが、場合によっては5期分もしくはそれ以上を確認することもあります。
毎期の売上・利益は増加傾向にあるのか横ばいか減少傾向にあるのか、キャッシュフローはどれくらいあるのか、一過性の収入や支出はあるのか、在庫管理は適正か、回収可能性の低い売掛金や貸付金がないか、代表者や関連会社との貸借はどれくらいあるか、などなどを見ています。
赤字決算だから、債務超過だから絶対に融資をしない、というものでもありませんが、融資審査ではマイナスに見られることが多いです。
そこで赤字決算や債務超過になった原因を調査していきます。
もしかすると、事業再編の一環で一過性の費用(固定資産売却損や除却損など)を計上したことにより、赤字決算になったのかもしれません。取引先が急に倒産して、やむなく貸倒損失を計上して赤字決算になったのかもしれません。新型コロナウイルス感染症により、蔓延防止策を取ったために売上が低下して赤字決算になったのかもしれません。
これらのように、ある意味仕方のない一過性の赤字決算であれば、審査には大きなマイナスポイントとはされないでしょう。
しかし、業務怠慢で赤字決算になったと思われる場合は、審査の点で厳しい目で見られます。
③税金滞納の有無
決算書の別表(5)には、税金について記載されています。ここで、「延滞税」に金額が入っていると、税金を延滞していたことがすぐに分かります。
金融機関としては、税金を延滞するのなら、融資金の返済も滞るかもしれない、と考えます。
うっかり税金を延滞することもあるでしょうが、その理由を聞かれることもあります。税金の支払期日を忘れてしまっていたのか、お金が無くて支払うことが出来なかったのか、のどちらかが主な理由になるでしょうが、そもそも税金を滞納しないように注意しなければなりません。審査の点でマイナスポイントになります。
ちなみに、納税証明書の提出を求められることもありますので、法人税や住民税だけでなく、固定資産税・都市計画税や各種都道府県税についてもきっちり支払っておきましょう。
④融資案件内容・事業計画の妥当性
融資案件内容や事業計画の妥当性もかなりチェックしています。ここでは、その融資案件で返済できるかどうかを重点的に見ています。
なお、公序良俗に反する融資案件や、反社会的勢力等との関りが疑われる場合などは融資審査で否決となるでしょう。
融資案件内容・事業計画について、まず事業者が利益を出すことが出来るかどうかを確認します。ここで問題となるのが、事業計画です。
事業者は金融機関から借入をするために、非常に売上や利益が計上出来るように計画を作成したりしますが、金融機関では見ただけで妥当な事業計画なのかどうかが分かります。事業計画と過去の決算書を分析し、必要なら所管の官公署などにも問い合わせて、どの程度が売上として見込めるのか、利益が残るのかを審査します。
妥当な事業計画ではない場合は、金融機関で売上や利益などを固めにした計画書を作成することもあります。
また、信用金庫や信用組合の場合は、地域のためになる事業かどうかも調べたりします。高齢化が進んでいる地域で老人ホームの新築・運営をする案件など、地域の特性を活かした案件ですと、前向きに検討しやすくなります。
逆に、過疎化が見込まれている田舎に、ファミリータイプのアパートを新築・賃貸する案件ですと、将来性や収益性の面からみて難しいと判断されることもあります。
まとめ
・融資審査では、事業者のこと、案件のこと、地域のことなど様々な面から見ています。
・金融機関により特色があるので、例えばA銀行では難しかった案件でもB銀行なら審査が通る、というようなことはよくあります。
・事業計画を作成するときは、妥当性のある計画にしましょう。
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