「優越的地位の乱用って何?」

 取引にあたっては、お互いに対等であることが望まれます。しかし、どうしてもどちらかが優越的な地位にある取引も多くあります。

 融資取引では、債権者(金融機関)に優越的地位があると考えられます。債務者(借入人)はお金を借りる立場ですので、債権者の条件を一方的に受けなければならないケースも見受けられます。
 例えば、融資取引の条件として債務者に投資信託を迫ったり、定期預金の預け入れを迫ったり、クレジットカードの契約を迫ったりすることなども少なくありません。「融資条件」とは言わないまでも、「お願い」という形でこれらの実質的な強要をしてくることもあります。

 融資を受けるときには、「融資条件」と「お願い」を区別する必要があります。
 「融資条件」は融資を受けるためにクリアしなければなりませんが、「お願い」は融資の可否に関係がないことが多いです。普通に考えれば、クレジットカードを契約しないと融資を受けられない、なんて可笑しな話ですよね。

 債権者の立場を利用して、債務者にとって不要なサービスや契約を締結することを、優越的地位の乱用と言います。当然ながら、金融機関のモラルとして優越的地位の乱用は行わないように指導されています。ですが、金融機関の担当者や支店としてのノルマも存在するのが事実です。これらのノルマは、債務者に「お願い」を聞いてもらうことによりクリアされていることでしょう。


 もし「お願い」を強要してくるのでしたら、その金融機関を利用しない決断も必要です。金融機関としても、債務者(貸出金)は沢山欲しいので、「お願い」を強要するあまり、債務者をみすみす取り逃がすこともしたくありません。せっかく融資審査をして支店長や本部の承認を得て、利息収入を得る機会が出来たのに、それを無駄にすることはしたくないでしょう。
 ちなみに、あまりに無理な「お願い」を強要された場合、金融庁や財務局に報告する手もありますが、あくまで最終手段と考えましょう。

 「融資条件」は優越的地位の乱用にあたらないことが多いですが、納得できない条件なら、なぜそういった条件になったのかを金融機関の担当者に聞いてみましょう。担保余力が少なかったのか、事業計画の見通しに不安があるのか、財務内容が弱いのか、などの理由を明らかにすることにより、今後の経営の課題が分かることも少なくありません。


 私が金融機関で勤務していたときは、出来る限り優越的地位を意識しないようにしていました。ですので、無駄なサービスや契約の締結を迫ったことはありません。また、債務者の希望があれば、前向きに検討するように心がけていました。
 行政書士となった今でも、お客様と対等な関係を目指していますし、当然無駄なサービスや契約は締結しないことを強く意識しています。綺麗事と思われる方がいらっしゃるかもしれませんが、自己満足も大事かと思っています。行政書士は士業といわれている以上、あまりズルいことはしたくないですから!

 

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